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大分地方裁判所 平成8年(わ)240号 判決 1997年1月27日

被告会社

商号

株式会社環境整備産業

本店

大分市大字下郡一二六八番地の一

代表者

首藤治顯

被告人

氏名

冨成顯義

年齢

昭和一六年一〇月四日生

本籍

大分県大分市大字羽田九八二番地の九

住居

同市長浜町一丁目一一番三号皐月マンション第三大分九〇八号

職業

無職

出席検察官

富松茂大

弁護人

岩崎哲朗(主任)、原口祥彦(私選)

主文

被告会社株式会社環境整備産業を罰金三〇〇〇万円に、被告人冨成顯義を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人冨成顯義に対し、この裁判の確定した日から三年間刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告会社株式会社環境整備産業(以下「被告会社」という。)は大分市大字下郡一二六八番地の一に本店を置き、一般廃棄物、産業廃棄物等の運搬処理を営業目的とするもの、被告人冨成顯義(以下「被告人」という。)は、被告会社の実質的経営者として、その業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようとして、一般廃棄物、産業廃棄物等の運搬処理による売上金の一部を除外するなどの方法により、所得を隠匿した上、

第一  平成二年一二月一日から平成三年一一月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六六二七万一二七二円で、これに対する法人税額が二四〇九万一六〇〇円であったにもかかわらず、平成四年一月三一日、同市中島西一丁目一番三二号所在の所轄大分税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の欠損金額が一二五万〇一八九円で、これに対する法人税額が零円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、被告会社の同事業年度における正規の法人税額二四〇九万一六〇〇円を免れ、

第二  平成三年一二月一日から平成四年一一月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六四四〇万四三六六円で、これに対する法人税額か二三三九万一五〇〇円であったにもかからず、平成五年二月一日、前記大分税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額が零円で、これに対する法人税額も零円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、被告会社の同事業年度における正規の法人税額二三三九万一五〇〇円を免れ、

第三  平成四年一二月一日から平成五年一一月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六一三一万八三八一円で、これに対する法人税額が二二二三万四二〇〇円であったにもかかわらず、平成六年一月三一日、前記大分税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額が一六四万七八八一円で、これに対する法人税額が四六万一一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、被告会社の同事業年度における正規の法人税額二二二三万四二〇〇円と前記申告税額との差額二一七七万三一〇〇円を免れ、

第四  平成五年一二月一日から平成六年一一月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が八二一九万四九二八円で、これに対する法人税額が二九九九万七六〇〇円であったにもかからず、平成七年一月三一日、前記大分税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額が一六八〇万二八九五円で、これに対する法人税額が五四七万五六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、被告会社の事業年度における正規の法人税額が二九九九万七六〇〇円と前記申告税額との差額二四五二万二〇〇〇円を免れた。

(証拠)(括弧内の番号は、証拠等関係カード記載の検察官の証拠請求番号を示す。)

判示全部の事実について

一  被告会社代表者の公判供述

一  被告人の公判供述

一  被告人の検察官調書四通(乙2ないし5)

一  冨成松美の検察官調書七通(甲15ないし21)

一  首藤治顯の検察事務官調書二通(甲24、25)

一  冨成隆男の検察官調書(甲26)

一  冨成泰弘の検察事務官調書(甲27)

一  谷口隆康の検察官調書(甲28)

一  山本哲好の検察官調書(甲29)

一  売上調査書(甲1)

一  役員報酬調査書(甲2)

一  給料手当調査書(甲3)

一  雑給与調査書(甲4)

一  福利厚生費調査書(甲5)

一  受取利息調査書(甲6)

一  雑収入調査書(甲7)

一  受取地代家賃調査書(甲8)

一  支払利息調査書(甲9)

一  損金の額に算入した道府県民税利子割調査書(甲10)

一  繰越欠損金の当期控除額調査書(甲11)

一  事業税認定損調査書(甲12)

一  申告欠損金調査書(甲13)

一  捜査報告書二通(甲23、36)

一  商業登記簿謄本(乙8)

判示第一の事実について

一  脱税額計算書(甲37)

一  確定申告書一綴(平成八年押第六五号の1)

判示第二の事実について

一  脱税額計算書(甲38)

一  確定申告書一綴(同押号の2)

判示第三の事実について

一  脱税額計算書(甲39)

一  確定申告書一綴(同押号の3)

判示第四の事実について

一  脱税額計算書(甲40)

一  確定申告書一綴(同押号の4)

(法令の適用)

罰条

被告会社について 法人税法一六四条、一五九条一項、二項

被告人について 同法一五九条一項

刑種の選択 懲役刑(被告人について)

併合罪加重

被告会社について 平成七年法律第九一号による改正前の刑法四五条前段、四八条二項

被告人について 同法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第四の罪の刑に法定加重)

刑の執行猶予 同法二五条一項(被告人について)

(量刑の理由)

本件は、一般廃棄物等の運搬処理を業務として行っていた被告会社の実質的代表者であった被告人が、被告会社の所得を隠匿し、四事業年度にわたり、合計九三七七万八二〇〇円の法人税を免れたという事案である。被告人は、もともと納税意識に乏しかったところ、自己の老後のことや、生まれてくる子供のことなど私利私欲のために本件犯行に及んだものであって、その動機には酌量すべき点はない。また、本件脱税額は四期分合計で九三〇〇万円余りにも及び、その脱税率は二事業年度続けて一〇〇パーセント、残り二期についても九〇パーセントを超えているが、それは納税制度をないがしろにするといっていいほどのものであって結果も重大である。加えて、被告人は、これまでに何度となく税務署の調査を受けながらも脱税を繰返し、とりわけ、平成六年度分の確定申告(判示第四の事実)については、税務署の調査中であったにもかかわらず、是正することなくあえて脱税申告するなど、その納税意識は極めて希薄であり、所得隠匿工作も広範多岐にわたり周到に計画された巧妙、悪質なものであるなどを考え併せると、被告会社及び被告人の刑事責任は重大である。

しかしながら、他方で、被告会社及び被告人は、事実関係を素直に認め、現在では脱税の重大性を十分自覚し、反省の情を示していること、被告会社は、本件脱税に関し、すでに修正申告をした上、本税及び重加算税などを納めていること、被告人は既に代表者の地位を退き、今後、被告会社の経営には一切関与しないことを誓約していること、被告会社は、代表者や経理担当者を交代させ、今後不正経理処理が行われないような体制を整えていること、被告人には傷害などの罰金前科が二犯あるが、いずれも二〇年以上も前の古いものであること、被告人の更生に対してその娘が協力を誓約していることなど、被告会社及び被告人に有利に斟酌すべき事情が認められるので、これらの事情を考慮して、主文掲記の刑を科するのが相当と判断した。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社に対し罰金三五〇〇万円、被告人に対し懲役一年)

(裁判長裁判官 徳嶺弦良 裁判官 園原敏彦 裁判官 山田整)

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